志引石(しびきいし)

志引石(しびきいし)

志引石のイメージイラスト

昔、岩切村(いまの仙台市宮城野区岩切地区・JR東北本線岩切駅がある)の街道に大きな石があって、通行の妨げになっていました。村人が大勢でこの石を除こうとしたのですが、どうしても動かすことができませんでした。

困り果てていると、どこからか一人の娘が来て、私にその石を任せよといいます。村人たちが「娘一人で何ができるものか」と思いながら見守っていると、娘は紫の襷(たすき)と鉢巻をして身支度をしました。そして石に手を掛けると、いきなり石は飛び上がり、多賀城の東田中(ひがしたなか、JR仙石線多賀城駅近く)の山裾に落ち、二つに割れたのです。石のうちひとつはいまも見ることができ、もうひとつは土中に埋もれているといいます。

飛んできた石は千引の石(せんびきのいし)と呼ばれましたが、のちに志引石と改められます。また、このふしぎな力を持った娘を祀ったのが志引観音です。石が落ちた場所が赤井家の田んぼであったので、観音堂の別当を赤井家が務めるようになり、この田んぼには肥料を入れず、農作業や暮らしの中で紫の布を用いることを戒めているといいます。