太郎天神
太郎天神

太郎天神
留ヶ谷(とめがや)の鎮守(ちんじゅ、地域の守り神)である天神社は、その昔はある一族の氏神(うじがみ、一族の守り神)として、屋敷内に祀られていた。
その一族の家督に太郎という者がいました。遠く伊勢詣り(いまの三重県の伊勢神宮参り)に出かけたので、太郎の爺さまと婆さまは、太郎の旅の安全を天神さまに祈り続けていました。しかし、太郎は帰って来るはずの頃になっても戻りません。
がまんできなくなった婆さまは、天神さまに、こんな歌を献上してしまいます。
太郎らんがマメ(達者)で帰らぬものならばおらが屋敷におかぬ天神
(太郎が元気で帰って来ないのなら、天神さまを家の外に追い出してしまうぞ)
それを見た爺さまは、あわててこんな歌を献上します。
婆らんが何を言ったとておれに免じておれや天神
(婆さまが何を言ったとしても、私に免じて天神さまは家に居てくださいませ)
天神さまはこのやり取りを良い方に聞き受けたのか、太郎は無事に伊勢詣りから戻ったそうです。それで太郎の家の氏神は太郎天神と呼ばれるようになり、いつしか留ヶ谷の鎮守として崇められるようになったということです。